一時停止された終末 /『フランシス・ベーコン展』

終末はすでに始まっている。

 

終末の到来とともに、教皇が叫び声を上げる。だがしかし、その声が我々に届く半瞬前に何ものかが一時停止ボタンを押したのだ。故に叫ぶ教皇の画は異様な静寂につつまれており、我々は一時停止した終末を生きている。すでに終わりが始まっていることから目をそらして?

 

しかし、いずれ再生ボタンは押される。その時叫びは我々の耳を貫き、空気を切り裂く。それを合図として、パテのような色あいの肉塊達はもぞもぞと動き出し、あるいは捩れ、あるいはアイスクリームのように溶け出し、犬は走りながら消え入るだろう。

 

 

『フランシス・ベーコン展』東京国立近代美術館

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