ポンヌフの恋人

『ポンヌフの恋人』(レオス・カラックス)がTSUTAYAに入荷してたので観た。ブルーレイじゃないのかよ!と思ったがどうやらブルーレイは出てないみたいだ。まあいい。

 

かつて、僕が本当に若かった頃、この作品を観た感想はあまり芳しいものではなかった。「最悪!つまらん!」ということは全然無かったんですが、ゴダール2世とかは言いすぎだろうと。でも、それから暫くたってからずっと気になってたんですよね。決定的に何かを見落としているんじゃないか、不当に低評価をつけてしまったんじゃないか。

 

そう思うにはちょっと心当たりがあって、若い頃の自分は潔癖という訳では全然無いにしろ、「汚い」ものに拒否反応があったわけですよ。この映画をご覧になった方はお分かりかと思いますが、オープニングからド底辺の汚い生活です。若い頃の自分からすれば、「あっち」の世界、「あっちだと信じている世界」なわけで、そこが結構辛かったんだと思うわけですよ。ついでに言えば「怖い」とか「痛い」とかも駄目で、自分にとっての映画鑑賞史は、「汚い」「怖い」「痛い」の3要素をどう克服するかの歴史であった気もするのです(おおげさ)。そんなのでジュネとか読んでたなんてお笑い種ではあるんですが。

 

とにかく、年をとって守備範囲は広くなっているし、今観たらものすごくど真ん中に来そうな予感はあったわけです。即借りてきて鑑賞スタートですよ。結果、大変良かった。ど真ん中という程では無いにしろ、「汚さ」を含めて美しいとさえいえる映像はかなり自分好みだし、折に触れて再鑑賞したい映画だ。パリのホームレスのどん底生活に、かつてのような拒否反応ではなく、一種のシンパシーをおぼえるようになったのが良いことなのか悪いことなのかはわからないけれども。

一方で、後半ちょっとゆるいかなという気はする。この映画のいいところは前半で結構出尽くしているんじゃないかという気がするので、90分ぐらいでまとめれたらと思わないでもない。話が動いてからがちょっと退屈なんですよね。

 

まぁ、映画本編の話はこのくらいでいいんすよ。ビックリしたのは映像特典のメイキングですよ(1.5倍速でみたけど)。1時間弱のテレビのドキュメンタリー的なメイキングなんですが、

 

「え、セットだったんですかwwwwww」

 

こんな感じですなぁ…。莫大な予算を投じてポンヌフとその周辺の街並みのセットを作ったとか思いもしませんよ。「ポンヌフとその遠景に見えるパリの街明かりと車のヘッドライト。それだけでもこの映画を観る価値がある」とか書いちゃうところだったじゃないですか。いや、もちろんそう書いていいんですよ!それは映画スタッフの技術力が素晴らしいということなんで。流れるヘッドライトまで照明で作られたものだったとは。

いやー、それにしても空撮で捉えられたセットの巨大さ、予算関係のゴタゴタ。普段は映像特典とかメイキングとか絶対観ない人間なんですが、このメイキングはリアル『8 1/2』の様相を呈していて必見です。