貴婦人と一角獣展

雨の中、乃木坂の国立新美術館へ『貴婦人と一角獣展』を観にいってきた。

 

6点の連作タピスリーが、天井の高い半円状の大きなホールにゆったりと配置されていて、大変に贅沢な空間。クリュニー中世美術館のように、作品間の間をぎゅっと詰めて、パノラマ写真的に視界に納めるような見方もしたいと思ったけれども、東京でそれをやったら、人ぎゅうぎゅうで間違いなく入れ替え制であろうから、これでよかったのだろう。

 

さて「貴婦人と一角獣」とは言うものの、私の視線は一角獣と対を成す獅子のほうへ。獅子の顔の方が表情に富んでいて何だか人間臭く、見ているとついつい笑ってしまうおかしみがある。ひと際感心したのは、画面一杯に敷き詰められた草花が、全て実在の草花をきちんと写し取ったものだということ。自分だったら、「綺麗ならいいだろ」と適当な花などをでっち上げそうであるのだが、タピスリー製作者はそんなぐうたらではなかったようである。結構博物学しているんですね。

タピスリーには草花と共に、ちっちゃい動物さん達もあちこちに配されており、一つ一つをじっくり見るのが大変楽しい。タピスリーに描かれた動物と植物をピックアップしてパネルで展示してあるのは大変良かった。図録にも載っているのでゆっくり楽しみたい。

 

それにしても、6点の連作といいながら、1点1点ごとにこれだけ画が違うのはどういうことなんでしょう(無論、別に非難ではない)?例えば、「聴覚」の貴婦人は若くて穏やかな美人さんであるが、「視覚」の貴婦人はちょっと怖い。最初「視覚」の画は、ユニコーンに説教かましている画かと思ったぐらいです。獅子が、「オレ知ーらね」とすっとぼけている感があるし。貴婦人だけでなく、動物たちもかなり描き方に違いがある。ここらへんは、タピスリーという複数の人間が関わる工芸製品では普通だったのかもしれない。もうちょっと詳しく知りたいところである。

 

その他にも、貴婦人と侍女の衣装だの色々あるのだが、このくらいに。

引いて画全体を眺めても、近づいて細部をじっくり見ても楽しい作品でした。

 

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