『風立ちぬ』

昨日レイトショーで観て来た。

 

126分という上映時間はあっという間だっただろうか?いいや、これは正しく時間を感じさせる作品であり、それは少しも退屈さを意味しない。

冒頭の少年二郎のイケメンぶりに早くも涙が出そうになったが、ぐっとこらえていると夢の世界の描写である。『耳をすませば』(近藤喜文監督)における夢幻的なシーンを思い起こさせるが、『耳すま』にあったようないささかの白々しさを感じさせず、きっちり作品に溶け込んでいるばかりでなく、コアな部分を担っている。これは中々にすごいことだと思う。

人の声を使ったと思われるSEは、この作品全体に漂う不穏な感じ、どうしようもなく恐ろしいものが潜在しているのではないかという疑いを増幅していて、すごく効果的だった。

津波のように建物がうねる震災の描写(予告でこれを観て映画館へ行くことを決めた)や、パラソルと格闘する二郎を見つめる菜穂子の表情の動き、二人を襲った土砂降りの描写等々、際立った表現を挙げていけばきりがない。菜穂子が都合のよすぎる(出来すぎた)ヒロインなのではないかといった批判をする人がいそうだが、まぁ瑣末なことではないだろうか。

禍々しさと美しさが同居するこの作品は間違いなく傑作で、とりあえずはこんな感想しか書けないのが情けない。

 

 

 

強いて難をつけるとすれば荒井由美のエンディングテーマの必要性だろうか。

 ついでに余談だが、高畑勲の『かぐや姫の物語』の予告に度肝を抜かれた。高畑は好きな監督ではないのだが、あれはちょっと凄いと思う。