エリア・カザン『紳士協定』

エリア・カザンの『紳士協定』はなるほど名作だと思わせる出来ではあるのだが、ただ一つ気になることがある。それは、ラスト手前でのキャシーの改悛である。それまで、あれほど強行に、「普通の」「善良な」人のラインに踏みとどまろうとして、グレゴリー・ペック演ずるフィルの言葉に反発していた彼女が、唐突に前非を悔いる。相談相手であるユダヤ人の友人デイヴがフィルと比べて特別秀でた知見を披瀝したわけでもなければ、滋味あふれる語りで彼女を導いたわけでもない。彼女は唐突に、まるで天啓にでも打たれたかのように、フィルが言わんとしていた事を認識してしまうのである。しかし、観客を納得させる転向の過程が描かれてないがゆえに、彼女のユリイカ的な台詞は非常に空々しく響く。穿った見方をすれば、熟慮の末に、やはりフィルと結婚したくなったがために行っているパフォーマンスのようにも見える。無論これは考えすぎで、実際ところはフィルとキャシーを結びつける結末を導くために、多少強引な手を使ったといったところであろう。この点は少し残念であるが、全体としてみれば、やはり見所の多い名作である。

8月に観た映画一覧

今更だけれど8月に観た映画一覧。粒ぞろいでかなり楽しめた。
『ブラッドシンプル』は初めて観たけれど、コーエン兄弟は最初からコーエン兄弟だったんだなとしみじみ思った。
チャップリンを観てたのは高校ぐらいまでで、成人してからはもういいだろ的に避けていたのだけれど、観るものが無くなって来た(近所のツタヤのラインナップ的に)ので今回久しぶりに観てみた。やっぱり凄かったです、ごめんなさい。喜劇俳優特有の、あふれ出るドロドロとした黒さみたいなものが苦手な人はいるだろうが、矢張り今でも観ておくべき作品群だと思う。
『狼 男たちの挽歌・最終章』は前2作と何の関係も無くズコーであったが、演出的には一番マカロニウエスタン色が強く、その点は楽しめた。
ブルーレイを買ってもいいかなと思ったのは『大脱走』。『スペル』はほとんどコント。

 

1.大いなる幻影
2.柳生一族の陰謀
3.硫黄島からの手紙
4.男はつらいよ
5.郵便配達は二度ベルを鳴らす(1942:ヴィスコンティ
6.アメリカン・ハッスル
7.アナと雪の女王
8.ブラッドシンプル/ザ・スリラー
9.ホビット 竜に奪われた王国
10.街の灯
11.ブリジット・ジョーンズの日記
12.黄金狂時代
13.狼 男たちの挽歌・最終章
14.スペル
15.エンダーのゲーム
16.大脱走
17.独裁者

8月ですね。と、7月に観た映画。

8/1~3と連休だったので、役所に行って用事を済ましてから、オルセー美術館展に行ってきた。予想通りの人ごみで、絵画をみにきたのか、どこぞの誰かの後頭部を凝視しにきたのかわからないといっては大げさだが、やっぱり夏休み中に行くのはお勧めしない。しかし、大きな展覧会に数多くいる「絵画にまったく興味が無い勢」は何なのだろうか?招待券もらったの?付き添い?

かなりの不満を残しつつ新美を後にし、フレッドペリーでポロシャツを買うつもりが、半袖シャツを買う。帰宅して掃除、洗濯とノルマ片付け。後はだらだらと過ごした。そうそう、『放浪息子』全巻を一気に読み返した。志村貴子はやっぱりすごいなぁ。

 

さて、7月に観た映画。『風立ちぬ』はやっぱりいい。「映画館で観る」という事をまったく重視していない人間なのだが、久しぶりに劇場で見といて良かったと思った。ブルーレイを買わねば。なるべく初見の作品を選んでいるのだが、徐々に再鑑賞作品が増えてきてしまっている。それはそれで別にいいんだけど…。正直、全体として結構低調なラインナップだったと思う。かつてのメガテン好きとして淡い期待をかけていた『レギオン』がぶっちぎって駄目だった。

 

7.スノーピアサー
9.スペース・カウボーイ
10.レギオン
11.レオン完全版
 
 
そういえば、steamのセールで買ったciv5はまだ一度も勝てていない。オレ相当アホなんちゃうん?

6月に観た映画一覧とか

6月は回線を変更したし(凄く快適になった)、steamのサマーセールがあったし(とりあえずCiv5やってる)、健康診断のために体調整えてたし(無事クリアした)、と色々あったので10本しか映画が観れていないのも致し方ないことなのである…。
そんな中で、「トランスフォーマー/リベンジ」、「2012」、「スターリングラード」の駄作三連発はまさに泣きっ面に蜂だった。

バッグが壊れたので初ポーターを買い(よかった)、スニーカーがぼろくなったのでNIKE FREE5.0を買い(いい感じ)、出費は抑えようと思っていたのに、今日ipod touchの液晶が割れてしまい再起不能。悔しいからこのblogに、「当分買い換えないからな!」と書き付けているのだった。英語学習はXperiaで我慢する、絶対。

 

1.ディパーテッド
2.サイコ
3.革命前夜
4.ウルフ・オブ・ウォールストリート
5.ソラリス
6.トランスフォーマー リベンジ
7.2012
8.スターリングラード
9.OK牧場の決斗
10.ワイルド・スピード ユーロ・ミッション

日々のこと

たまには日々のことも書くよ。

TOKYU MUSIC LIVEという無料招待のライブを毎年オーチャードホールでやっているようなのですが、今年は矢野顕子プロデュースで、くるりの岸田君なんかも出演するとの情報が。べっつにはずれてもいいから応募しとくかぐらいの気持ちだったのだが、当選発表が近づくにつれて、「あー、予定あけなきゃー。○○も仕事休んでくんないかなー」などと妄想をふくらませていたら、落ちてた!何であんなにも当選を確信できていたのか!戸愚呂弟の名言「おまえもしかしてまだ自分が死なないとでも思ってるんじゃないかね?」を思い出した。ギギギ
悔しいので8月のブルーノート東京のライブのチケット(矢野顕子トリオ)をとってやった。アリーナペアで22000円オーバー+飲食代か。何事も無く8月を迎えられればいいなぁ。

ウエルベック「地図と領土」を読み終わって、何故か樋口一葉を読んでる。久々に明治期の文学を読むとなんとも読みづらいが面白くもある。「地図と領土」は前作と比べるとちょっと残念な出来だったのだけれども、世評は高いようだ。俺が間違っているのか?

 

5月に観た映画一覧

自分自身に日々のノルマを課しすぎると立ち行かなくなる好例。という訳で16本しか観れなかった。やらなきゃならないことをパッとやって時間を捻出すればいいのだが、どうにも怠惰なもので…。


さて、昔観た作品が混ざる率が高くなってきた。近所のツタヤが主戦場なのだが、どうにも作品をセレクトするのが厳しい。AVスペースを撤去して、映画枠を拡大してくれないかと思って居るのだが、望みは薄いだろう。

今まで断片的にしか観たことのなかった「男たちの挽歌」にようやく手をつけたのだけれども、なるほどファンが多いのも頷ける内容だった。あんなにだっさいおっさんとだっさい兄ちゃんの3人組が格好良く見えてしまうなんて。しかし、2はもう駄目かな。1のような後の無いヒリヒリした感じがもう無い。チョウ・ユンファに生き写しの双子の弟がいた設定には笑わされたが。3はいつか観る、と思う。

ダニー・ボイルの「スラムドッグ・ミリオネア」。ダニー・ボイルといえば「トレスポ」なわけだが、正直あんまり好きではない。確かに時代を背負っている作品だけれども、どうにもゆるい。そのゆるさに対する批判も、「時代性」だとかそれこそが「今」なんです(今となっては「当時」だが)と言ってかわせてしまうしまうタイプの作品であるところがなおさら気に食わない。「否定は肯定なんです!」論法の精神分析みたいだ。もちろん、そこまで悪い映画だとも思わないのだけれども、デビッド・フィンチャーが撮っていれば的な妄想を抑えられない残念さを持っているのは確かだろう。となると、「スラムドッグ」にも手が伸びるはずも無く、今まで放置していたのだけれども、これは大きな間違いだった。ああいう構成で主人公の半生をたどっていくとは。画もいい感じだったし、もっと早く観ておけばよかった。

 

書くのがだるくなってきた!
子供のころ以来となる「オズの魔法使い」は、冒頭の竜巻の迫力にびびった!あんなにすごかったっけ?
スコセッシはいつも何か足りない。何か?センスとか言っちゃっていい気もするが、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」には期待している。

 

 

1.トッツィー
2.ミセス・ダウト
3.エリジウム
4.ソウ
5.アメイジングスパイダーマン
6.アバウト・シュミット
7.バベル
8.男たちの挽歌
9.リベリオン
10.ヴェラクルス
11.ウルヴァリン:SAMURAI
12.スラムドッグ・ミリオネア
13.オズの魔法使い
14.男たちの挽歌2
15.ギャング・オブ・ニューヨーク
16.2GUNS

4月に観た映画一覧

なんだか月に一度映画リストを貼り付けるだけの更新になってしまっていて、真に残念。もう少し色々書きたい気もする。

 

とりあえず4月に観た映画。

シン・レッド・ライン」はやっぱり良かった。ナレーションでそういうようなことを言っているからというわけではないけれども(言ってたよね?)、人類の共通の記憶を見ているかのように錯覚させる映像だと思う。映画を観ていると、時々ヴェンダースの「ベルリン・天使の詩」を思い出すことがある。今更言及するまでも無い名画ですが、あの映画の天使はカメラのことでもあるのだろうなとずっと思っていた。故に、映画を観ている時に、「あ、今自分は天使の視点でものをみているのだ」と感じることがある。この「シン・レッド・ライン」もそう。「ベルリン~」とカメラワークが似ているとか、そんなことは一切無いけれども、ただ見て記録することしかできなかった天使たちの記憶を共有しているかのように思わせる映画でした。「天国の日々」は矢張り近所のツタヤには置いてなさそう。買うか?でもブルーレイは出てないようだ。

期せずしてガス・ヴァン・サントの作品を4本観たが、一番良かったのは「エレファント」。なんだか、「しゃれおつで、ナードがどうとかスクールカーストがどうとか、なんとか系なんとかがどうとか言って、今を切り取っている感を味わっている方々が好きそうな映画」という偏見があり、今まで忌避してきたのだが、全然そんな映画ではなかった。前述の偏見は、おしゃれなパッケージと、おそらく「桐島~」との比較の俎上に挙げられることが多かったために植えつけられたものだと思うし、確かに「桐島~」が受けた影響は明らかであるが、映画の出来は雲泥の差である。

今月は色々言いたい映画がたくさんあるのだけれど、クッソ暑いのでここまで。

 

 

1.キャプテン・フィリップス

2.小説家を見つけたら

3.魔法少女まどか☆マギカ〔新編〕叛逆の物語

4.シャンドライの恋

5.シン・レッド・ライン

6.チャーリー・ウィルソンズ・ウォー

7.トータル・リコール(2012)

8.ビッグ・フィッシュ

9.フレンチ・コネクション

10.太陽がいっぱい

11.ライフ・オブ・パイ

12.ハイ・フィデリティ

13.エレファント

14.マジェスティック

15.バニラ・スカイ

16.ゼロ・グラビティ

17.ブギーナイツ

18.ドニー・ダーコ

19.パラノイドパーク

20.死霊のはらわた(1981)

21.グランド・マスター

22.グッド・ウィル・ハンティング